環境に優しい風力発電になぜ環境影響評価が必要なのか?
風力発電サイトを建設するにあたって、まず始めにするのは建設候補地を探すことです。風車を建設するためには多くの条件がありますが、何よりも「強い風が吹く」ということが重要です。地域や季節、さらには年毎によって風の吹き方は変わります。風を読み取り、どこに強い風が吹くのかを判断するための「探し方」を紹介します。
CEFの環境影響評価調査
CEFではNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の作成した「風力発電のための環境影響評価マニュアル」に基づき評価を行います。国の認定を受けている第3者機関でに調査を依頼し、より公正な調査及び評価を実施します。主な調査項目として「騒音」・「低周波」・「電波障害」・「地形及び地質」・「動物」・「植物」・「景観」など多岐にわたり、それらの調査を実施します。
環境影響評価調査の流れ
第1段階:意見を聴取しながら調査項目や内容を決める
①計画地の自治体ごとの環境関連法規(条例や要網など)を整理する。
②計画地の特性や、①の関連法規、上記NEDOのマニュアルなどをふまえ、環境影響評価方法書を作成する。
③環境影響評価方法書を地域住民・自治体へ1ヶ月公開し、意見を募り概要としてとりまとめる。
④ ③と同様に環境影響評価方法書に関して、有識者等から意見を聴取し概要としてとりまとめる。
第2段階:環境影響評価準備書の作成
第3段階:方法書をもとに環境影響評価調査を実施し、影響を予測・評価する
調査は原則として一年間実施する。但し、諸条件によってはそれ以上の調査期間を設けることもある。例えば、猛禽類の生息が確認された場合、調査期間は1年半になる。
第4段階:環境影響評価書案に対する意見を聴取し、事業者の見解を作成する
① 環境影響評価書案を地域住民・自治体へ1ヶ月間公開し、意見を募り概要としてとりまとめる。
② ①と同様に環境影響評価書案に関して有識者などから意見を聴取し、概要としてとりまとめる。
③地域住民・自治体及び有識者などからの意見に対する事業者見解を作成する。
④環境影響評価書案に対する意見を考慮した環境影響評価書を作成する。
環境影響評価調査項目
1.騒音に関する調査
騒音については「現地調査による暗騒音の測定値」と「予測計算式による予測値」を算出し、これらの合成値から環境への影響を予測・評価します。
さらに風車建設後に再度現地調査を行うことで、実際の事業における騒音レベルを把握し、地域に公開・説明をしていきます。
現地調査
・調査地域
一般には計画地の半径500m以内。
・調査地点
上記の地域内で風車設置予定位置から最寄りの住宅・学校・病院などの付近。
・調査期間
1季以上について平日または休日あるいはその両日に、昼間及び夜間を連続して行う。
・調査手法
①地方公共団体が行っている環境騒音測定資料がある場合は、それにより情報収集を行う。
②「騒音に係る環境基準について」(平成10年環境庁告示第64号)で定められたJIS-Z8731「騒音レベル測定法」に定める測定方法によって等価騒音レベルを算出する。測定機器はJIS C 1502普通騒音計を使用。
・調査のまとめ → 評価
調査地点別に各時間帯の騒音レベル・天気・風向・風速等を一覧表などによって整理する。また、騒音レベルは必要に応じてはオクターブバンド別に記載する。測定値は原則的に「騒音に係る環境基準について」に基づいて評価する。
・測定時には騒音測定に影響を与える天気・風向・風速・気温・湿度の調査を行う。
特に風向・風速については設置を計画している風力発電機の稼働条件を考慮し、様々な条件下での測定を行うことで幅広く情報を把握することができる。
・以下は環境基準の適用対象ではない騒音なので、対象とする騒音の範囲からは除外して測定・評価を行う。
→航空機騒音、鉄道騒音、建設作業に係る騒音、鳥の鳴き声や虫の声など平常ではない自然音、パトカーのサイレンなどの時限的・限定的に発生する音、犬の鳴き声等測定による付加的な音
予測値の算出
・予測地域
調査地域と同じ。
・予測地点
調査地域と同じ。
・予測対象状態
最も騒音が大きくなると考えられる「全ての風力発電機が運転している状態」において予測する。
・予測の手法
風力発電機を点音源として、風力発電機メーカー等から示されるパワーレベル値を用いて、伝搬過程における「幾何学的拡散による距離衰弱」「空気の吸収等による超過衰弱」などを考慮した予測計算式によって、それぞれの音源による到達騒音レベルを算出する。さらに、音源ごとの到達騒音レベルを合成することによって、予測地点における到達騒音レベルを算出する。
まとめ
予測地点ごとの予測値及び、現地調査における騒音レベルとの合成値を一覧表により整理する。また、騒音レベルは必要に応じてオクターブバンド別に記載する。この結果を使って、建設後に行う現地調査の数値との比較検討を行う。
2.低周波に関する調査
低周波音とは公害問題としての人間生活に係る騒音および騒音影響の分野で使用される言葉で、一般に、周波数100 Hz以下の音を指します。さらに20 Hz以下の音は超低周波と呼ばれています。このような可聴域の低周波音の聞こえ方というのは、一般には個人差によるものが大きいとされています。しかし、低周波音は窓枠サッシや二重窓などによる防音効果も低いことから、仮に環境基準(専ら住居の用に供される地域においては夜間45 dB)を下回っていても睡眠障害などが発生する可能性は残ります。また、騒音による影響の度合いは心理的な要因に左右されやすいという性質があり、騒音レベルとしては非常に低い数値であっても、これまでに無かった音が新たに加わることで苦痛を感じる場合もあります。
そのため、地域住民に対しては事前に十分な調査と結果の開示を行い、さらに騒音調査同様、風車建設後に再度現地調査を行うことで実際の事業における低周波の発生レベルを把握し、それらを地域へ開示・説明します。
調査の内容
・ 調査地域
一般には計画地の半径500m以内。
・ 調査地点
上記地域内で、風車設置予定位置から最寄りの住宅・学校・病院などの付近。
・ 調査期間
1季以上について平日または休日あるいはその両日。
・調査手法
① 地方公共団体が行っている測定資料がある場合は、それにより情報収集を行います。
②「低周波音の測定方法に関するマニュアル」(平成12年10月 環境庁大気保全局)において定められた方法により低周波音レベルを算出。
まとめ
調査地点別に低周波レベル・天気・風向・風速等を一覧表等によって整理する。また、低周波レベルは、必要に応じて1/3オクターブバンド別に記載する。
3.電波障害に関する調査
テレビ電波の受信・重要無線の状況・その他電波送受信施設の状況について、障害が起こる可能性を予測・調査します。これまでは風力発電機のような複雑な形状をした構造物による影響を正確に予測することは困難であるとされてきましたが、近年では(財)NHKエンジニアリングサービスなどによる影響予測が行われ、予測制度も高まってきています。環境影響評価調査では、風力発電機の運転前の受信状況を調査によって把握した上で、なんらかの障害が発生した場合に然るべき処置を行うことで対応が図られています。
4.地形及び地質に関する調査
「重要な地形及び地質」とは
① 環境保全関係法令により指定されているもの。
② 既往調査により希少性等の観点から選定されているもの。
③ 学術上重要なもの。
調査の内容
以下のような項目から、その地域に適切なものを実施。
① 測量・空中写真などによる地形調査
② ボーリング調査などによる地質調査
③ 必要に応じて力学試験などの調査)を整理
まとめ
① 土地分類図などの整理
② 必要に応じて測量図あるいは現地調査写真の整理
③ 重要な地形・地質の重要な根拠・概要(規模・内容)を整理
重要な地形及び地質の分布、成立環境の状況を踏まえ、開発予定地域の地形改変量などの環境影響程度を把握し、既存事例の引用または解析、その他適切な方法により予測します。この予測に基づき、開発予定地の変更・縮小などが行われることもあります。例えば、CEFでは、福井県での「敦賀・今庄ウインドファーム」の事業に際して、花崗岩と元比田礫岩という貴重な地質が発見された為に、開発計画を見直した事例もあります。
5.動物に関する調査
風力発電が動物、特に鳥類に与える影響については、その種・行動形態に応じて様々であることが予想され、その影響予測精度の向上には、事業の実施前並びに運転後における調査結果の蓄積が不可欠な状況となっています。例えば、風力発電所の設置前・設置後の渡り鳥の移動経路の変化を調査を行い、風力発電機を迂回する様子の確認事例などが積み重ねられることによって、種類の違いによる影響の程度差が明らかになっていき、よりポイントを絞った環境影響評価調査とすることができるようになると考えられます。
調査の流れと内容
調査内容は「哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、昆虫類に関する動物相の状況」と「重要・注目すべき種の生息・生息地の分布・生息地環境の状況」です。文献その他の資料の参照、専門家その他の環境影響に関する知見を有する方(保護団体等)からの科学的知見の聞き取りなどから状況の把握し、その上で適宜、現地調査を行います。 「学術上」又は「希少性の観点」、「地域の象徴であること」などの理由によって、「重要・注目すべき種の生息・生息地」が開発予定地域周辺に確認される場合には、更に重点化した現地調査を実施します。
「重要な種、注目すべき生息地の分布、生息状況、生息環境の状況」とは
①『文化財保護法』(昭和25 年法律第214 号)により指定されているもの。
②『絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律』(平成4年法律第75 号)により指定されているもの。
③ 絶滅のおそれがある動物名を記載した「レッドデータブック」及び「レッドリスト」(環境省)等に取り上げられているもの(適宜最新の情報を使用)。
④「自然環境保全基礎調査」(環境庁)に希少種または重要な種として取り上げられているもの。
⑤ 地方公共団体により指定されているもの(都道府県版レッドデータブック、レッドリスト等も含む)。
⑥ 自然公園の区域内で指定されているもの。
⑦ その他地域特性上重要と考えられるもの。
⑧ 鳥類保護・保全の観点から重要と考えられるもの。
(猛禽類の営巣地、餌場、渡りのルート及び中継地、集団繁殖地、餌場と休息地の移動ルートなど)
調査の内容詳細
以下のような項目から、その地域に適切なものを実施します。
①大・中型哺乳類のフィールドサイン調査
直接観察・死体確認・足跡・糞・食痕・巣などの生活痕跡の特徴や写真等の記録をとり、その種類を同定して生息を確認する。
②小型哺乳類の捕獲調査
捕獲した個体について、種の判定根拠として外部形態(全長・尾長・後足長・耳長・体重)及び性別を計測・記録する。
③コウモリ類のバットディテクター(超音波探知機)を用いた調査
バットディテクターを用いて、コウモリ類の出現状況を確認する。但し、バットディテクターを用いた調査においては、すべての種の判定を行うことは困難であり、文献その他の資料あるいは聞き取りによる調査の結果等と併せて調査結果の整理を行う必要がある。
④鳥類相調査
ラインセンサス法・ポイントセンサス法及び、それ以外の場所・観察日・時間帯における任意の観察調査。
⑤鳥類における重要な種及び注目すべき生息地の調査。
④の鳥類相調査に準じた手法によるほか、必要に応じ「概略個体数推定調査」「餌となる動植物等の調査」「繁殖状況調査」を行う。その際、鳥類保護・保全の観点から重要と考えられるもの(猛禽類の営巣地・餌場・渡りのルート及び中継地・集団繁殖地・餌場と休息地の移動ルートなど)については、更に詳細なマニュアルにしたがって実施する。
⑥爬虫類の直接観察調査
直接観察と併せて、脱皮殻の観察、道路上で轢死体の観察も行う。なお、直接観察調査において種名の確認が困難な場合は、採集を行う。
⑦両生類の直接観察調査
直接観察(鳴き声の確認を含む)と併せて、採集観察、産卵期に卵塊の観察、道路上の轢死体の観察を行う。
⑧昆虫類の採集調査
まとめ
調査結果は、動物相については主な確認種のリスト、確認した地点及び状況(現地調査の場合)を結果の概要の記載及び図、表に整理します。重要な種及び注目すべき生息地については、保全すべき理由、確認した地点及び状況並びに生息環境を結果の概要の記載及び図、表に整理します。ただし、それらの情報については、公開に当たって希少な動物の保護のため、必要に応じて場所を特定できないようにするなどの配慮が必要です。
6.植物に関する調査
生態調査の流れと内容
調査内容は「植物相と植生の状況」と「重要な種及び重要な群落の分布、生育の状況及び生育環境の状況」です。
文献その他の資料の参照、専門家その他の環境影響に関する知見を有する方(保護団体等)からの科学的知見の聞き取り等から状況の把握し、その上で適宜、現地調査を行います。「学術上」又は「希少性の観点」、などの理由によって、「重要な種及び重要な群落の分布」が開発予定地域周辺に確認される場合には、更に重点化した現地調査を実施します。
「重要な種、注目すべき生息地の分布、生息状況、生息環境の状況」とは
① 『文化財保護法』(昭和25 年法律第214 号)により指定されているもの。
② 『絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律』(平成4年法律第75 号)により指定されているもの。
③ 絶滅のおそれがある動物名を記載した「レッドデータブック」及び「レッドリスト」(環境省)などに取り上げられているもの(適宜最新の情報を使用)。
④ 「自然環境保全基礎調査」(環境庁)に希少種または重要な種として取り上げられているもの。
⑤ 地方公共団体により指定されているもの(都道府県版レッドデータブック、レッドリストなども含む)。
⑥ 自然公園の区域内で指定されているもの。
⑦ その他地域特性上重要と考えられるもの。
調査の内容詳細
以下のような項目から、その地域に適切なものを実施します。
① 植物相及び植生
植物相の状況は、現地踏査により目視観察し出現種を確認する。植生は、ブラウン-ブランケの植物社会学的植生調査法により調査区ごとに植生高、階層構造、出現種数、種組成、被度、群度、成立立地などを調査する。
② 重要な種及び重要な群落の分布及び生育状況の調査
①の植物相及び植生の調査に準じた手法によるほか、必要に応じて、個体数、株数、分布面積の把握を行う。生育環境としての地形の状況の把握は尾根、斜面上・中・下部、傾斜方位など土壌状況の把握は、重要な群落の生育地において国有林野土壌調査方法などに基づいて、土壌の種類、土壌層位、土色、土性等をそれぞれ調査する。ただし、生育地が湿原などのように、土壌調査での試孔による環境影響へのおそれが予想される場合には、土壌調査は行わない。
まとめ
調査結果は、植物相については主な確認種リスト、確認した区域及び状況(現地調査の場合)を、植生については群落特性及び群集などの分布状況を、それぞれ結果の概要の記載及び図(現存植生図、潜在自然植生図を含む)、表に整理する。重要な種及び重要な群落については、保全すべき理由及び分布地、確認した地点及び状況、生育環境を図、表に整理する。ただし、それらの情報については、公開に当たって希少な植物及び群落の保護のため、必要に応じて、場所を特定できないようにするなどの配慮が必要です。
7.景観に関する調査
景観について客観的に評価することは難しいことですが、周囲の景観と調和が図られるよう配置・デザイン・色彩などについて配慮することが望まれます。地域によっては景観に関する条例を定めている場合もあるため、留意が必要です。
調査の内容
①「主要な眺望点」・「景観資源」の状況
「主要な眺望点」とは、不特定多数の者が利用している場所、及び地域住民が日常生活上慣れ親しんでいる場所のうち、風力発電機を望むことができる場所です。また、「景観資源」とは、山岳や湖沼等に代表される自然景観資源、及び歴史的文化的財産価値のある人文景観資源をいいます。これらについて、入手可能な最新の文献その他の資料及び現地調査により把握することとし、必要に応じて国又は地方公共団体などから聴取して、風力発電機の設置の場所及びその周辺地域における分布状況を調査します。
② 主要な眺望景観の状況
主要な眺望景観とは、主要な眺望点から景観資源を眺望する景観をいいます。これらについて、①に関する調査結果により作成した主要な眺望点及び景観資源のリストから、主要な眺望景観を抽出し、風力発電機の設置場所との位置関係、規模、利用特性、自然環境保全関係法令など(自然公園法、都市計画法、文化財保護法、景観条例・要綱など)の指定状況、地域住民などとのかかわりを調査します。
基本的な調査の手法
① 文献調査
入手可能な最新の文献、その他の資料により把握し、必要に応じて国又は地方公共団体などから聴取する。
② 現地調査
現地を踏査し、写真等の撮影及び目視確認を行う。
③ 航空写真・CG・地形模型解析
メッシュ標高データによる数値地形モデルを用いて作成し、可視・不可視領域を把握する。
フォトモンタージュ
主要な眺望点から撮影した写真に、風力発電所の完成予想図を合成し、景観の変化を予測するためフォトモンタージュと作成。
まとめ
① 主要な眺望点リスト
「名称・理由・風力発電機の設置場所との位置関係など」及び個票(眺望点の写真・眺望特性・利用特性など)
② 景観資源リスト
「名称・理由・風力発電機の設置場所との位置関係など」及び個票(景観資源の写真・資源特性・利用特性など)
③ 主要な眺望景観リスト
「名称・理由・風力発電機の設置場所との位置関係など」及び個票(眺望点の写真・眺望特性・利用特性など)